このたび本校科学部が、公益財団法人かずさDNA研究所(千葉県木更津市)が実施する教育支援・人材育成事業「高校生部活動支援プログラム」に採択されました。
このプログラムは,未来を担う子供達への教育支援と我が国のゲノム科学や生命科学に関わる人材育成を目的として,生命科学を対象とする部活動をサポートするもので,2024年から開始されています。
本校科学部(部員数45名)は,これまで独自に進めていた研究をもとに構想を練り,環境DNAを用いた環境評価をテーマに応募しました。
研究所からの支援と助言を受けて,今後ますます活動を充実させていきます。
≪かずさDNA研究所ホームページ≫
https://www.kazusa.or.jp/
≪かずさDNA研究所「高校生部活動支援プログラム」紹介ページ≫
https://www.kazusa.or.jp/supportprogram/
≪研究構想概要≫
●研究テーマ
eDNAを用いた厚別南緑地の環境評価 ― 自然再興を目指し,地域から世界へ
●研究概要
「自然と共生する世界」を目指した「自然再興」への転換点を探るために,都市部の自然公園である厚別南緑地において総合的な環境評価を行う。これまで実施してきた毎木調査では,当緑地が住宅地に位置する公園にも関わらず郊外の自然林と同等の樹種多様性・バイオマスを有し,独特の動物相を呈することがわかった。その原因として,郊外に見られるような大型哺乳類が侵入していないことが考えられる。そこで,環境DNAを用いた哺乳類相の網羅的解析および両生類の単一種解析を通じて,調査地が独特の生物相をもつ要因を明らかにするとともに,海外の姉妹校との共同研究を通じて国内外における自然再興への方策を検討する。また,地域住民とも協働しながら,緑地の保全と利活用の両立を図る。
●背景と目的
昆明・モントリオール生物多様性枠組には「2050年ビジョン」として「自然と共生する世界」が掲げられており,その実現に向けた「2030年ミッション」として「生物多様性の損失を止め,自然を回復軌道に乗せる」ことが求められている。ある生態系が回復軌道に乗っているかどうかを判断するためには,その生態系の豊かさを継続的かつ定量的に評価する必要がある。
そこで本研究では,継続的・定量的な観測を通じて身近な森林環境の生態的特徴と社会的価値を明らかにし,地域住民と情報を共有しながら保全と持続的利用の可能性を探っていくことを目的とする。
現在までに,本校に近接する自然公園である厚別南緑地(北海道札幌市,7.27 ha/札幌市統計)を対象に毎木調査などの基礎調査を実施したところ,郊外の自然林と同程度の樹種多様性・バイオマスを有することがわかった。また,目視調査ではエゾモモンガやエゾサンショウウオなどの在来種が比較的高密度で見られた。一方で,樹皮を食害するエゾシカや捕食者となるアライグマなど大型哺乳類の侵入の形跡がなく,これが樹種多様性や小動物の“オアシス”的環境の成立に寄与している可能性がある。これを検証するために,本年度は環境DNAの網羅的解析による哺乳類相の把握と,単一種解析による両生類の定量的比較に取り組む。
