MESSAGE

理事長・校長メッセージ

(学)札幌日本大学学園 理事長
札幌日本大学中学校・高等学校 校長

浅利 剛之

私学を目指す小学生・中学生を取り巻く現在の世界・日本の状況について

 

 

日本は戦後の高度成長期、バブル期の絶頂期を経て、バブル崩壊、東日本大震災と長らく低迷期を迎えました。その後日本はグローバルビジネスに活路を見出し、存在感を示してきましたが、長引くコロナ禍の影響で今まで積み重ねてきたものが大きく崩れました。さらにロシアのウクライナ侵攻、原子力発電所を始めとするエネルギー問題、食糧問題、地球温暖化、自然災害、人口減少など数多くの地球規模的な難題をかかえ、何が起きるか予測不能な時代になっています。特に日本の場合人口減少の問題は深刻で、今の状況で日本の高いサービス力を維持するには日本における外国人労働者の増加は必然で、そうなれば多くの外国人と普通に共生する日本社会になっていくと予想しています。現在コロナ禍から脱却し、社会が動き出したことで、世界の状況はさらに未知の領域に進んでいき、その中での日本の変革はまったなしの状況です。

学びの価値観や環境の変化・進化について

日本の教育は周知の通り、長らく知識の習得に焦点が当てられてきました。そして一生懸命知識を蓄え、難関の入学試験に合格し、大学を卒業後希望する会社に入社し、指示されたことを忠実にこなす高い事務処理能力により存在感を出してきました。一方、正解のない問いに向き合う精神力(レジリエンス)、最適解に導くための斬新な発想等、自分の知識で解決できないことに対しては、訓練されていないこともあって、持っているはずの能力を発揮できていません。この能力をいかにつけていくかに焦点を当てる教育が現在、世界標準(グローバルスタンダード)であり、この新しい教育の成否がポストコロナのグローバル社会で日本が先頭にたっていけるかどうかのカギになるでしょう。

今後の教育はどうなっていくべきか、どんな人材を育てていくべきか

日本の学校教育は、こうしなければならないといった伝統、形に長らく縛られてきました。これらによって日本人特有の協調性や規律が培われてきたのですが、グローバルな世界で渡り合っていくには、この既成概念を取りはらい柔軟な頭で人材育成をする必要があります。さらに、世間の学校教育に対する要求が過多で、そのすべてに対処しようとすることで、その結果子供も教師も疲弊し、よい教育が実践できないという状況になっています。教育にはグランドデザイン、ビジョンが必要でそれに沿ってやるべきことを取捨選択し、信頼関係のもと、学校が一つになることが大切です。

今後の教育は、科目の垣根を取り除き、教え込むのではなく、自分で考え、見つけ出す教育にシフトしていくことでしょう。その過程では仲間と議論したり、上手に表現することも必要でしょう。また学習場所も学校だけではなく、世界のありとあらゆる場所、そして自宅さえもオンラインで様々な学習ができるようになるでしょう。さらに勉強は教師だけが教えるものではなく、世界中の人々に触れ、話し合うことが大きなきっかけになるでしょう。学校の中だけで勉強が完結する時代は終わりました。学校教育を常に流動的な環境におき、そこで生徒が何に出会い、何を学んでいくか、この定型をつくらず安住しない環境、前例にとらわれない環境を意図的につくっていくことが必要だと考えています。その結果、個性をつぶさず徹底的に伸ばし、とんがりをもった独創的かつ協調性を併せ持った人材をいかに育てていくかが今後の新しい教育になっていくと考えています。

札幌日本大学中学校・高等学校の新しい教育とは

学力のグローバルスタンダードは、すでに「何を知っているか」という知識の積み重ねではなく、知識や技能を自在に活用して「何ができるか」、そしてより詳細には「どのような問題解決を成し遂げるか」という資質能力の体系にあります。本学園も従来の学習で各教科等の主要なコンテンツベース(内容)であった教育課程をコンピテンシーベース(資質能力)の教育課程に切り替える方向に進んでいます。現在本学園のキーコンピテンシーを「未来創造力」と位置づけ、その「未来創造力」育成に基づく教科横断的なカリキュラムマネジメントや教育制度の整備が進行中であります。具体的には、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)、スーパーグローバルハイスクール(SGH)、国際バカロレア(IB)、中学SDGs課題研究、外部アドバイザーによる理論と実践の総合探究等の全校体制の探究型活動(PBL)を通して諸問題に向き合う中で「未来創造力」を育成しています。さらに各教科の中でも単なる知識の提供にとどまらず、「未来創造力」育成を念頭に活用、さらに大きな問題解決にせまっていくオリジナルの授業を組み立てています。これらの取り組みではまずは問い(リサーチクエスチョン)が大事であり、最終的には自分が世界に生きる人のwell-beingをどう考え、それを自分の幸せにつなげるかを理解し実現に向かうことが目標になります。思考コードにおいてはC3(世界人類のための創造的な思考)を目指すことになります。

大学入学試験との整合性について 

大学入試に必要な学習内容に加えて資質能力「未来創造力」を育てる探究学習を実施するとなると、時間が足りなくなるのではと考える人がいますがそうではありません。むしろ最初の頃にじっくり時間をかけて「未来創造力」を育成することにより、いい循環が生まれ、結果的に学年末や卒業時までには、大学受験に必要な知識をすべて身につけることができると考えています。そして学習全体を探究学習を主に切り替えることで、大学入試を突破できる学力が今まで以上につくと確信しています。

また大学入試そのものも時代に応じて変化してきています。初見の問題や深い思考力が要求される問題が出題され、従来の問題演習だけでは十分にカバーできなくなってきています。大学入試突破は目標としては必要ですが、目的にするべきではないと考えています。未来の大きな夢を描きそれに向かう途中にあるもので、その未来の実現のために通過点として突破していくことが理想であると思います。大学入試自体が目的化すれば、多くの生徒が何のために学習をするかという意義を見失い、その結果身も心も疲弊することが多くなります。学習とは本来楽しいものです。自分の好奇心に正直に向き合い、好きな学習を極めていけばその延長線上に、自分の未来、夢が拡がる。勉強をする意味も浮かび上がってくる。そうなれば、自分の好きなことに夢中になることで将来に向かって、言われなくても努力を惜しまなくなるでしょう。心に火がつけば、いわずとも努力するでしょう。学校の一番の大きな役割というのは、この心にどう火をつけるかであり、ここが学校の腕の見せ所であると考えています。それができれば、後は学校の用意している仕組みの中で学習していくことができます。教員も惜しみなく皆さんをサポートしてくれるはずです。このように大学入試に必要な知識をコンテンツ(内容)とすれば、キーコンピテンシー(創造力育成)を育む探究学習とは二項対立するものではなく、むしろ両方の調和で相乗効果が起き、一体的な実現を目指すことができると考えています。

札幌日本大学中学校・高等学校の教育方針とは

 

本校の教育は、人材育成像を「世界に貢献する人」、教育方針を「本物の正しい教育」と掲げて実践しております。コロナ禍の3年間は世界との交流が途絶えましたが、日本は資源の少ない小さな島国ですから、日本人の特性を生かしつつポストコロナはやはり世界の舞台に活路を拡げていくしか方法がありません。地球全体を俯瞰した上で、日本、地域を考えるバランス感覚はこれから生きる者にとってさらに大事になります。そしてその環境の中で世界、人類に貢献する意識をもった優れた人間性と、困難を克服して進めていくことのできる精神力・実力を兼ね備えた人材を育成し北海道、日本、世界の発展に寄与していくことを目標にしています。また、その人材育成のための本校の教育方針は、子供たちの成長に必要か、どういう教育が子供たちにとって有益か、一つ一つに真剣に向き合う「本物の正しい教育」を突き詰め実践していくことが大事だと考えています。

過去にとらわれず様々な可能性を探り、世界標準で通用する学校にしていきます。そして今後の日本の教育のモデル校として先頭で引っ張っていきたいと考えています。

本校の教育の具体的な取り組み

まずは、先述した「創造力」育成のための全校体制の探究型活動(PBL)と探究型授業です。また、総務省指定の異能vationネットワークにも指定されており、一芸に秀でた人材の発掘、育成にも力をいれております。そしてもう一つ興味を引き出し、心に火をつける仕掛けとして、ICT教育、Blended learning、外部企業と連携したプログラミング教育など多様な教育実践を展開しております。また国際交流も盛んで、留学生も多く多様性を尊重する風土になっております。もちろん部活動や行事にも力を入れています。一人一人の持ち味を生かせるよう、そして一人一人のこだわり、とんがりを伸ばせるよう、この多彩な教育で創造力、独創性がありかつ日本人の強みである協調性を併せ持つ人材を育成していきたいと考えています。国際バカロレア(IB)も今年1月から本格スタートし、英語ネイティブ教員6名を中心に質の高い教育を実践しています。スーパーサイエンスハイスクール(SSH)もⅢ期申請が通り5年間さらに高度な理数科学教育を進めていく土台ができました。生徒の部活動や探究学習、授業をサポートする480名収容の多目的ホール「新未来空間NLink」も5月に完成しました。来年は本校の教育内容によりマッチし、時代を反映した新しいコンセプトの制服にも変わります。このように刻一刻と学園は進化しています。

本校を志望する小学生や中学生、保護者の方にメッセージ

受験生の皆さんは、既に目標の大学やなりたい職業が決まっていて目標に向かっている人、または反対に将来に迷いや不安がある人など状況は様々だと思います。しかし、色々な経験をする中で目標が変わったり、新しく見つかったりというのが人生です。ですから目に前にある機会を大切に広い視野を養ってほしいと思います。凝り固まった思考で六年間を過ごすより、様々な経験や事柄、人物に出会い、深く物事を考え、自分の好きなことや夢中になるものを見つける、そしてその延長戦上に受験があり、自分の志望する大学に入学していくという過ごし方の方が魅力的ですし、結局目標の達成にも近道になることは間違いありません。時代もこういう人を求めています。ぜひ本校に入学してスケールの大きな学びをして「世界に貢献する人」になってほしいと思います。

将来への責任と覚悟

私学は自由度が高い分、積極的に時代を見据えた教育に挑戦していく責任があると思います。挑戦しなければ存在意義がないとさえ思います。本学園は先行き不透明な日本、北海道の未来を予想し、新しい学びへの変革を積極的に進めていく強い覚悟があります。伝統校や他に大きな成功体験のある学校はなかなか今までの価値観から変わることができません。本校はまだ歴史が浅く、価値観が固定化されていません。そういう意味では自由度が高く、未来に可能性が大きく拡がっている数少ない学校だと思います。最近の学校の取り組みが評価されてか、先生不足が叫ばれる中、全国の個性豊かで実績のある先生が続々本校に集結してきています。今や全国の学校から視察希望が多数ある学校になってきました。個性的で実力派の先生、教育内容そして個性を伸ばす生徒がどう響いてどう化学反応を起こすか、私もとても楽しみにしている状況です。

目先の小さなことを目指すのでなく、未来を見据えたスケールの大きな学校にして、日本そして北海道の教育界をけん引していきたいと考えています。

今、近未来そして20年先、先を読む力と誠実さで
教育の本質を探究し続ける学校へ

(学)札幌日本大学学園 理事長
札幌日本大学中学校・高等学校 校長

浅利 剛之